――いよいよ、『たまゆら~卒業写真~第1部 芽-きざし-』の上映が迫ってきました。今の率直な気持ちを聞かせてください。
田坂 この『卒業写真』は、物語的にも最後に向かう話ですし、いろいろな意味で集大成。OVAの途中からは、楓ちゃんたちを卒業させることが目標だったので、卒業までを描いていくシリーズが始まることはすごく嬉しいです。それに、今までのシリーズでは、スケジュール的な事情で飯塚晴子さんに制作現場に入っていただくことができなかったのは口惜しいことではあったんです。飯塚さんに総作画監督として入っていただいた上で最後が迎えられるのも、すごく嬉しいことですね。あと、たくさんのお客さんに見ていただけたら良いなと思っています。
――先日、第1部の関係者試写が行われたそうですが、作品への手応えはいかがですか?
田坂 絵の雰囲気も今までとけっこう違いますし、内容的にもより繊細に描けていると思います。しっかりと制作期間もかけて、テレビシリーズ以上のクオリティにしたいと考えていたので、目指していたことができているという手応えがあります。
――アフレコや会議などさまざまな場で、今までの『たまゆら』とは違う雰囲気を感じることはありますか?
田坂 ありますね。第1部のアフレコはいつもと変わらない雰囲気だったのですが、本読み(シナリオ打ち合わせ)のときに、それを感じました。『卒業写真』は来年春の「卒業式」まで続くのですが、例えば、山田由香さんの担当パートの本読みが終わったら、今後、山田さんに『たまゆら』の脚本を書いていただくことは二度とない。『たまゆら』の制作現場では、山田さんとは一生お別れなんです。もちろん、吉田玲子さんや、ハラダサヤカさんもそうですね。脚本作業はすでに第4部まで終了しているので、お三方それぞれの最後の担当回の本読みが終わったとき、今まで一緒に『たまゆら』を作って来たみなさんが「もう、『たまゆら』の本読みにくることは無いんだな」と思って、1個1個の終わりを感じました。
――すでに、お別れのときを体験してるんですね。
田坂 はい。これから先、アフレコ、イベント、上映など「最後だな」と思うことが、どんどん増えていくんでしょうね。とはいえ、上映やイベントの準備など、いろいろやることも多いので、第4部が終わるまでは、感傷的な気分になっている余裕はあまりなさそうですが(笑)。
――脚本作業は終了しているとのことなので、『卒業写真』全体として、どのような物語になっているのか、ネタバレにならない程度にうかがえますか?
田坂 4人それぞれのこれからの夢であったりが描かれていて、「4人の卒業」をしっかりと見られる物語になっていると思います。僕自身、彼女たちの卒業後の道について「こうじゃないよな……」といった悔いを残したくはなかったので、『卒業写真』の本読みでは、自分の感じたことは、今まで以上に明確に伝えるようにしました。
――やはり、4人の夢や将来の目標に関しては、会議でも重大なテーマになったのでしょうか?
田坂 全員をしっかりと卒業させてあげたいので、卒業に向かうまでの行動や将来の目標については、スタッフがいろいろな意見を出し合いました。娘の進路について、たくさんの親がそれぞれに愛情を持って、意見を言っているみたいな感じでしたね(笑)。ケースバイケースですが、比較的、時間のかかった子もいます。4人の夢の着地点がどのように描かれていくのか、楽しみにしていただきたいです。
――最後に、プロデューサーとして、『たまゆら~卒業写真~』に対する意気込みを聞かせてください。
田坂 妥協をしない。この気持ちを常に忘れないようにしたいです。5年間たまゆらに関わってきて自分が今まで感じてきたことや、やってきたことに自信をもって。自分の思う「ファンが喜んでくれること」に対して、さらに妥協なく取り組んでいきたいですね。ファンの皆さんの気持ちや意見などに一番近いというか……一番多く知ることができる立場にいるわけですから。それは、楓たちが卒業するにあたって、悔いを残さないことに繋がるし、最後をしっかり作ってファンの方に喜んでいただくためにも、必要なことだと思うので。ひとつひとつのことに妥協せず、遠慮せず、取り組んでいくつもりです。自分自身も、第4部が終わって、卒業式が終わったときに、『たまゆら』を卒業できるように5年間の集大成をぶつけていきたいですね。