「アニメーションプロデューサー」という役職は、どういったお仕事を担当されているのでしょうか?
皆川 プロデューサーには、メーカーさんのプロデューサーと現場のプロデューサーがいるのですが、自分は制作会社のTYOアニメーションズに所属している現場のプロデューサーになります。基本的に、スタッフの編成から始まり、本編を納品するまでが担当ですね。ただ、たまゆらの場合、自分がプロデューサーとして参加した時点で、佐藤監督についてはすでに決まっていました。シナリオを吉田さんにお願いしたいということになり、その連絡をしたりといったことが最初の仕事でしたね。
――皆川さんがアニメーションプロデューサーとして、『たまゆら』で特に大事にしていることを教えてください。
皆川 『たまゆら』ならではということであれば、舞台が実在する土地なので、それをどこまできちんと描けるかということでしょうか。アニメーション的に、どうしても嘘をつく必要もあるんですけどね。それでも、基本的にはできるだけ舞台に沿ったものにしたいので、その確認などに必要な時間を取れるかも気にしています。
――企画の当初から、そこは意識されていたのですか?
皆川 もちろん背景は常に大事ですが、OVAの時はどちらかと言えば、キャラクターの方に意識がいっていたと思います。でも『hitotose』をやる時には、背景もかなりしっかり見せていかないと、お話的に成り立たない作品なのではと思うようになっていました。
――長年、『たまゆら』に関わってきて、特に印象的なことや、大変だったことを教えてください。
皆川 ほぼすべてのイベントを観に行ったり、スタッフとして参加したりという経験は今までにないですね。例えば、原作ものだと出版社さんの仕切りだったりするので、僕らみたいな現場のプロデューサーが(イベントにも)深く関わることはほとんどありません。でも、『たまゆら』の場合、手作り感が強くて、現場のお手伝いにも行ってますからね。最初にコミケでグッズを出した時には、待機列の整理もしました(笑)。大変なことは、ロケハンの多さでしょうか。イベントのついでにロケハンした時も含めれば、年間に4、5回は竹原へ行ってるので。
――舞台になる土地が東京から遠いので、ロケハンも大変ですね。
皆川 自分の場合、幸か不幸かロケハンの時はほとんど晴れているんですけど(笑)。どうしても1回のロケハンで、たくさんの場所を回ることになって時間が過密になるので、慌ただしくて大変ですね。あ、ロケハンの話で思い出したのですが、予算の管理もプロデューサーとしての仕事なんですね。この作品は、元々、千葉や神奈川が舞台の候補地だったので、取材予算もその分しか用意してなかったんですよ。それがいきなり瀬戸内海になったので、(OVAの時は)ロケハンの予算を組むのに苦労しました(笑)。
――遠方から竹原のイベントへ行く、たまゆら~の苦労を実感されたのでは(笑)。
皆川 そうですね(笑)。たくさんのファンの方が竹原に行ってくださっていますが、正直、誰もが行ける場所ではないとも思っているんです。学生さんだったりすると、交通費とかも大変じゃないですか。だから、そういった方にも、作品の中で竹原の魅力をしっかり知ってもらえるように描きたいとは常に思っています。
――完結編となる『卒業写真』ですが、『第1部 芽-きざし-』の予告映像も公開になりましたね。
皆川 キャラクターの印象がかなり変わっていますし、映像的な雰囲気も少し変化していると思います。今まで、スケジュールが合わず、飯塚さんには本編に参加していただけてなかったのですが、飯塚さんの力一つでこんなにも変わるのかという驚きがありました。あとは、髪の毛のグラデーションの処理なども少し足したりしているので、そういう細かいところも観ていただけると嬉しいです。
――『卒業写真』に関して、ファンの皆さんには、どんなことを楽しみにしていて欲しいですか?
皆川 脚本はすでに全話アップしているのですが、楓たちの心情などが、すごく丁寧に描かれています。コンテ作業も中盤に来ていて、佐藤監督と助監督の名取君がかなり作り込んでくれている。それを映像としても上手く見せられるように、自分も頑張りたいです。
――コンテは、佐藤監督と名取助監督のお二人で担当されているのですね。
皆川 はい。テレビシリーズだと、佐藤監督がコンテを担当するのは12本中3本が限界。でも、今回は半分を担当することになるので、そのあたりも楽しみにしていただければ。やっぱり佐藤監督のコンテは、見ると「うわ! すげえ!」ってなりますよ。
――最後に、アニメーションプロデューサーとして、『たまゆら~卒業写真~』に対する意気込みを聞かせてください。
皆川 とにかく、OVAより1期、1期より2期、2期より今回と良いものにしていかなきゃならないので、ハードルは上がらざるを得ないですよね(笑)。そして、ずっと観てくださっている方々も今回で卒業というか、楓たちときちんとお別れができるものを作らなくてはいけないと思っています。もちろん、作品が完結しても楓たちの物語や成長はまだまだ続いていくので、そこは皆さん一人一人の中で思い描いていって欲しいのですが、一応、アニメーションとしての区切りはしっかりと見せて、満足していただきたいですね。