――いよいよ、4月4日(日)からシリーズ完結編『たまゆら~卒業写真~』の上映が始まります。これまでのOVAやテレビ放送とは異なり、4部作を劇場で順次上映していくというスタイルの狙いを教えてください。
佐藤 続編をやるにはどういう形が1番良いのかという話の中で、どちらかと言うと、製作委員会の側から出てきたアイデアですね。OVA、『hitotose』『もあぐれっしぶ』とやってきて、ある程度『たまゆら』のファンも固定してきた中で、最後の3年生の1年間を、よりしっかりと観てもらうための方法として話が出てきました。「来週どうなるかな?」という形ではないので、これまでとは話の作り方も少し違っています。また、絵作りの面でも劇場向けのアプローチにはなっています。
――全4部の中での『第1部 芽-きざし-』の位置づけは、どういったものなのでしょうか?
佐藤 ゴールであり、新しいスタートラインでもある卒業に向けてのスタートという感じですね。ここからみんなで、「さあ、1年後に向かうよ」という気持ちがひとつになると良いなと思っています。また、新しいシリーズの第1話ということで、これまでの話のおさらいも含めて全員の立ち位置を1回確認した上で、卒業に向けてスタートを切るようなエピソードでもあります。
――『芽-きざし-』というタイトルには、どのような意味合いがあるのでしょうか?
佐藤 これは田坂プロデューサーのアイデアです。最初の話なので、未来に向けて明るい方向に向かえるようなワードを探していて。いくつかの候補を出しながら、考えていたんです。その中で、田坂さんが、この言葉を見つけてきてくれました。
――第1部はどのような物語になっているのでしょうか?
佐藤 『卒業写真』は、楓、かおる、のりえ、麻音の4人のそれぞれの夢がどういうところに着地していくのかを追いかけていくシリーズです。第1部では、まず楓の目標について描いています。やはり、楓が『たまゆら』の主役ですからね(笑)。
――楓たちの卒業をどのように描いていくかについては、過去のシリーズを作っているときから具体的な構想があったのでしょうか?
佐藤 過去のシリーズの本読み(脚本打ち合わせ)などでも、「どんな道を行くんだろうね」みたいな話をすることはありました。でも、具体的に「この子はこうである」というのはなかったと思います。なるべくぼかしたまま、あまりガチッと決め込まないで進めてきました。
――では、『卒業写真』の制作がはじまってからは、楓たち4人の夢や卒業後の進路について、すぐに決まっていったのでしょうか?
佐藤 例えば、楓にしても、ずっと「カメラが好きだ」とは言っていますけど、それを仕事にしたいのかどうかについては、これまでの話で言ってない。のりえだって、スイーツ以外の道に行くことはあり得るし、かおるや麻音に関しては「どうするの?」という感じ(笑)。いろいろな可能性はあったので、決まるまでに比較的、時間がかかったキャラクターもいます。それに、関わってきたスタッフの愛情もより濃くなっているからか、『卒業写真』では、本読みのときに「この子は、こういうことはしないのではないか」とか、「この子には、こういうことをさせたい」といった意見が、これまでのシリーズよりも多く出てくるようになりました。やっぱり、受験とか将来という話が出てくると、それぞれの体験が色濃く反映されてくるんですよ(笑)。
――深い愛情を注いできたキャラクターたちの将来が決まるわけなので、熱い意見が出てくるのも分かる気がします。
佐藤 それに、とりあえず大学などに進学をしてみて、そこで将来の目標を見つけるということも、実際の高校3年生の選択肢としては普通にあること。でも、それだと、ドラマを作る上では煮え切らない(笑)。「高校生のうちに目標を決めておかめないと、将来が心配である」みたいに、それを否定するわけにもいかないですし(笑)。そういうところでも、ドラマ作りが大変でした。
――では、最後に、監督として、『たまゆら~卒業写真~』に対する意気込みを聞かせください。
佐藤 これが最後の『たまゆら』になるので、今までにできなかったことを、もっとやっていきたいですね。例えば、第1部では、今までよりもかなり多くのカットでレイアウトチェックをやっています。普段だったら(スケジュール的な理由で)限られたカットしかチェックできないのですが、今回はかなり多めに回してもらいました。他の作品も含めて、こんなにガッツリとレイアウトをチェックしたのは久しぶりのことだったので、楽しかったです。そもそも、演出をすること自体が好きなので、絵をいじるのは好きなんですよ。