#3 『海辺のエトランゼ』制作のお話・後編
お話の見どころである、駿と実央の関係についてお聞かせください。
大橋
駿はいろいろ悩みがちで、ひとりでいると深刻になりすぎちゃう人なのかな。でも、能天気な実央を見て「そうか何でもないのか」と心が安定する。一方、実央も駿がいるからこそ、ああいう実央でいられるんじゃないでしょうか。ふたりがいるから、どちらも自由でいられる関係なのかなと思います。
紀伊
実央はまだ若いし、環境に適応して変わっていけるタイプだからいいですけど、駿は逆に、退行している印象もありますよね、甘えているというか。駿は器用とは言えない生き方をしているキャラクターだと思います。その分、お互いがお互いを補い合っている関係かもしれないです。原作者としては、ふたりの、ゆっくりと変わっていく関係を楽しんでもらえればと思っています。
橋本駿役の村田太志さん、知花実央役の松岡禎丞さんはドラマCDからの続投となりました。おふたりの演技の印象はいかがでしたか。
紀伊
アニメ化が決まった当初から、キャスト陣はドラマCDからそのままでとお願いしていました。駿役の村田さんと実央役の松岡さんはずっとドラマCDで演じていて、おふたりともキャラクターを育てていると思ったので。映画でもぜひ役を受けてもらえたらと思っていたので、村田さんと松岡さんが演じる駿と実央を見られてよかった、と感じています。
大橋
村田さんと松岡さんの中にすでに駿と実央がいるので、私からは何か言うことはなく、、全面的に頼らせてもらいました。ファンのみなさんは、「駿と実央が映像になったら、どんな声を聴かせてくれるんだろう」と楽しみにされていると思うんですが、私もひとりのファンとして聴かせていただいた感覚です(笑)。
アフレコで印象に残ったことを教えてください。
大橋
桜子を演じた嶋村侑さんの演技も本当によかったです。桜子のやわらかさや、女性らしさを魅力的に表現していただけたと思います。他のみなさんもドラマCDからの続投で素晴らしかったのですが、実央の子供時代を演じられた子役さんがびっくりするぐらい天使でした(笑)。もう、現場が騒然とするくらいで。実央の子供時代の場面はこの映画の見どころのひとつになったと思います。
紀伊
実央の幼い頃を描いた一連のシーンは原画さんも上手いかたが担当してくれていますし、演者さんもとろけるような演技で奇跡のシーンになっています。アフレコ現場でもみんな総立ちになって見守っていました。あの臨場感は忘れられないなぁ! と思います。
(#4に続く)