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『海辺のエトランゼ』アニメ化にあたって
紀伊先生、アニメ化が決まった際のご心境はいかがでしたか。
紀伊
お話をいただく以前から、担当編集さんに「アニメ化されたらどうします?」など聞かれることもあったので、すごく驚いたりとかはありませんでした。「あっ、そうなんですか……」くらいのテンションで。ただ、私は以前アニメスタジオに務めていたのもあり、アニメ化に伴う大変さは何となく把握してしまっているので「忙しくなるなぁ」と、やんわり覚悟を決めた覚えがあります。
大橋監督は『海辺のエトランゼ』の監督に決まったとき、どう感じられましたか?
大橋
まず、『海辺のエトランゼ』がアニメ化されるほど支持される作品になったことが、紀伊さんの友人として素直に嬉しかったです。そして「私が監督でいいのか!?」と血の気が引きました(笑)。
私は紀伊さんの絵がとても好きですし、テーマの描き方が「こうあるべき」ではなく「こういうのもあっていいよね」ぐらいの温度感なのも心地良くて。そんな素晴らしい作品の監督を私なんぞがやってよいのだろうかと、お腹が痛いです。
紀伊先生が大橋監督をご指名したそうですが、その理由を教えてください。
紀伊
大橋さんは在籍時代の同僚なんですが、直接組んだのは「『宝石の国』1巻発売記念フルアニメーションPV」が初めてでした。その時の彼女の仕事ぶりが丁寧で、真摯に作品に取り組んでいると感じていたんです。彼女となら、面白く作れそうだなと思いお願いしました。実際、気の毒になるくらいしっかり作ってくださっていて、受けてもらえて本当によかったと思っています。
大橋監督が感じる『海辺のエトランゼ』の魅力とは。
大橋
ちょっとゆるかったり、いい事ばかりでもない日常が続くお話ですけど、そこがすごくいいんです。駿と実央はちゃんとご飯を食べて、ちゃんとお仕事もして、毎日を普通に生きている。そんなふたりの姿がとても愛おしくて。あとは、お話が続くにつれて、ふたりの肩の力がだんだん抜けていく感じもいいですね。
映像化にあたりどのような作品にしようと考えましたか。
大橋
原作ファンの方がこのアニメを観たときに、喜んでもらえるものになっているか考えました。そのために、紀伊さんにキャラクターデザインだけでなく、映像作り全体にも深く関わってもらっています。いかに原作の印象を変えずに、60分の映像として自然な流れのものを作るか。それが大きなテーマとなりました。
(#2に続く)