バレエ作画監督
やぐちひろこインタビュー
バレエの美しさをちゃんと描きたい
バレエを正面から取り上げたアニメーション作品は珍しいです。
そうですね。私は知り合いから「バレエ好きだったよね。興味ある?」と声をかけられたことをきっかけに参加を決めました。私自身、子供のときにバレエをやっていたこともあり、かなり前のめりに参加を決めました。

バレエシーンの作画作業は、どんなふうに進めたのでしょうか?
多くのバレエシーンについては、実際に専門家の踊りをモーションキャプチャし、それを3DCGに反映した参考の動画がありました。
これをもとに原画さんに、まず大まかにラフのプランを描いてもらい、そこでバレエの押さえておきたいポイントなどをチェックして、その上でレイアウトとラフ原画に入ってもらうようにしました。レイアウトの前段階でチェックがあることで、普通の工程よりもチェックが1回多くなっています。
ラフだけでも大変な作業なので最初の段階で、方向性を固めようということでこのやり方になりました。

絵コンテの段階では、どのぐらいまで決まっていたのでしょうか。
絵コンテの段階ではそのシーンでなにを伝えたいかはわかる内容でしたが、踊りについてはそこまで具体的に描かれていませんでした。なので、演出打ち合わせのときに、やりとりを重ねて具体的にどんな動きにしていくかを固めていきました。
カット内の細かい部分ですが例えばオルガが千鶴に「リラの精の踊り」(『眠りの森の美女』)を教えるシーンは、最初は口で教えるだけでしたが、オルガが踊って教えるように提案しました。実際にレッスンを受けていてもそういうことはありますし。そういう工程で作っていたので、事前に撮ったモーションキャプチャには無い内容になることもあり「どうしましょうか」となることもありました。

バレエをバレエらしく描くうえでどんな点を意識したのでしょうか?
今回、私はバレエをある程度リアルに描きたかったので、バレエの何が美しいかをちゃんと表現したいと考えました。
例えば3DCGは踊りの全体的な動きを反映したあたりなので、そこに反映されていない足先、指先などは意識を払ったポイントです。バレエは先端がきれいなことが大事なので。そういう要点については、最初の段階で、つま先の伸ばし方や手の使い方などについての注意事項をまとめて、原画さんに共有しました。
そのほかポジション、姿勢、目線といったものも実際に忠実に描くことで、バレエの持つ余韻も含めて伝えられたらと思って描きました。

千鶴のバレエシーンはどのように描こうと考えましたか。
千鶴はあの年齢からバレエを始めて、プロに追いつけるほどの、天才ではあるんですよね。だから基本の動きも含めて、最初から上手く描いています。
ただ谷口監督と話をして、武道をやっていたから関節が開かない、股関節がかたいという設定にして、それを踊りには反映しています。非常に細かいところですけれど。

苦労をしたシーンはどこでしょうか。
大勢の人が画面内で踊るシーンや長尺カット、モーションキャプチャのないダンスカット、練習シーンなどは、大変でしたね。担当された原画さんも苦労されたと思います。
あと、『ジゼル』が上演されるシーンは、尺も長く、カメラワークもついていたので大変でしたが、同時に気に入っているシーンにもなりました。
