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宮尾俊太郎がパリエトを語る!K-BALLET TOKYOコラボ特別試写会レポート

3劇場アニメ『パリに咲くエトワール』のK-BALLET TOKYOコラボ特別試写会が3月3日(火)午後新宿ピカデリーにて行われ、バレエダンサーで俳優、そしてK-BALLET TOKYOの芸術監督を務める宮尾俊太郎さんが上映前に登壇し、トークショーを行いました。

大きな拍手の中登場した宮尾さんは、荒天の中駆けつけた観客に向け「思い出はいつもの日も雨、ということで今日はいい時間になるよう頑張ります」と第一声から会場を和ませました。

宮尾さんはいち早く映画を見たとのことで、「作画、アニメーションの美しさが素晴らしくて。幼少の頃からジブリを見て育ちましたので、どこかすごく懐かしい思い出に浸らせていただきながらも、現代の持つ技術というんでしょうか、カメラワーク、絵の美しさが圧巻でした。僕たちの世界もそうなんですけど、古典的に大切にし続けているものと現代の技術の掛け合わせた名作がここにできたんだなと思いました」と熱く語りました。「ストーリーも普遍的なテーマでもあると思うんですが、今この時代で世界でも大変なことが起こっている中、芸術の持つ力というのは国境を超えて輪を作っていくことができるんだなということを、改めてこの映画を見て確信させていただきましたね」「いつの時代も我々の前には壁が立ちはだかりますけれど、やはりそれを超えていける力があるよということを教えてくれるストーリー」との見解は、特に混迷する昨今の世界情勢を考えるとより胸に染み入ります。

本作を華やかに彩るバレエシーン。バレエの動きをアニメーションで作り上げることの難しさは谷口監督も語っているところだが、自身もバレエ経験者だったやぐちひろこ氏がバレエ作画監督として参加、チームをまとめ上げて行いました。そうして出来上がったバレエシーンはプロからみてどうだったのだろうか。宮尾さんは「絵がすごくバレエのことを分かってらっしゃって、僕の目線からいうと音楽と動きがすごくあっていて、バレエの動きをアニメーションで表現する際、なかなか精密に合わせることが難しい。そこをきっちりと作っていらっしゃるなという印象と、バレエって動きに常にねじりが入っていることが多いので、それをアニメーションにすることがすごく難しいと思うんです。なので上半身の動き、顔のつけ方も横じゃなくて斜め、360度全部使いますので、そういったものを作画の動きの中に感じたので、それは素晴らしいなと思いました」と、プロならではの視点で解説してくれました。

ほぼ全ての観客がバレエ観劇経験者という本日の試写会、そうした目の肥えた観客でも本作を楽しめると太鼓判。「バレエ音楽もたくさん出てきます。最初に出てくる曲が、僕が大好きなバレエ音楽。10代の頃からアメリカン・バレエ・シアターのミハイル・バリシニコフさんという方がいたんですけれども、その方のビデオテープを何度もその音楽のシーンから繰り返し見ていたので、劇中でその曲が流れた時には、10代の頃のバレエを見てワクワクしていた頃の気分にタイムスリップさせていただきました」と自身の思い出と共に語りました。

実際に宮尾さんもフランスに留学経験があり、「カンヌに留学していたんですよ。日本とは違う建築、石畳とか石造りのお家・・・年月が経っている“良き古さ”と言いますか、そういった街並みがすごく美しくて、そういった描写がこの作品の中でたくさん描かれていて、何か僕も留学中に大変な思いだったりとか色々『キツイな』と思う稽古の日々を過ごしていましたけれども、そういった街の情景や夕陽の美しさが心を癒してくれた。この作品の描写で当時の風とか香りとかが飛んでくるような感じがしました」と、思い出を引き出すほどにリアルな情景描写にも感嘆しました。

主人公のフジコや千鶴たちと同年代の頃に留学をしていたという宮尾さん。「僕はまだこの作中に出てくるような嫁ぎ先を急いで決めなくてはいけない状況ではなかったですけれども。・・・今は焦ってます」と会場を笑わせながら、「僕が留学していたのは2000年ごろだったので、当時でもまだアジア人ということでお店で話しかけても無視されたり、バレエの世界でもアジア人は難しいと言われることもありました。海外のカンパニーに就職するという時には外国人ビザで、そのカンパニーがお金を払わなければならないので、外国人を雇うだけの突出したものを当然求められた。そういうことは壁としてありましたけども、バレエというものがあるおかげで国とか人種を超えて、皆さんと触れ合えた時間というのは、すごく宝物です」と実感をこめました。

本作で登場する千鶴は、フジコと同じアパルトマンに住むルスランの母・オルガにロシアバレエの手ほどきをうける。そこから、パリ・オペラ座のバレエ団を目指していくのだが、国ごとの“スタイル”に話が及ぶと宮尾さんは「バレエはイタリア発祥と言われていますが、そこからフランスで発展して、最後ロシアに行って完成されたと言われているんですが、その中でイギリスにも渡ってますし、イギリス式、フランス式、ロシア式、いろんな国でそれぞれ時間をかけて発展してきた歴史があるんです。日本でもロシアの方が亡命されてきて、アメリカに行こうとしたんですけれども戦争が始まってしまったので、江ノ島の方で教室を開いた。当時の日本の習い事といえばお茶とかでしたので、免許皆伝システムのようなものを作って、うちで何年勉強すれば先生としての資格は取れますよというのを渡したのがきっかけで日本はバレエが広まって行った。なので日本ってバレエのお教室がすごく多いのはそこからきているんです」と、バレエの知られざる歴史も明かしてくれました。「今となっては日本でも100年の歴史がありますので、日本独自の日本スタイルのバレエというものがあっても何もおかしくない状態だと思います。僕が芸術監督をやらせていただいておりますK-BALLET TOKYOの作品たちも世界にひけを取らないような素晴らしい作品がたくさんありますので、それだけ日本のバレエも発展してきたんだなと思います」と、日本バレエの今についても言及しました。

また、本作では画家を目指すフジコ、そしてバレエの夢を秘める千鶴が互いを支えに異国の地で夢を追う。そうした出会いや受ける刺激について聞かれると宮尾さんは「やはり僕もすごくありがたいことに色々なジャンルのお仕事をさせていただいてますので、近々ですと演劇で藤原竜也さんとご一緒させていただいていて。多く言葉を交わしたり意見交換はしませんけれども、舞台に立つことへのあり方、向き合い方、人との接し方という点ではすごく勉強になることが多くて、大きな刺激をいろんな方々からいただいています。それは音楽の方もそうですし、一緒に新作を制作しておりますデザイナーの方からも。国境を超えてジャンルも超えて、いろんな方からいっぱい刺激をいただいております。僕はこの二人、フジコと千鶴を見た時に、一人の人の頭の中のような感じがしてしまったんです。自分たちの足りない部分を自分たちで会話して補い合っているような、そんな印象を僕は受けました」と語りました。

「今の方々に“こうしていいんだよ”ということをお伝えできるとしたら、『弱さをさらけていい』『弱さを人に見せるという勇気を持つこと』はすごく大事だなと思いました。そうしたらきっと周りの方が助けてくれるし、自分の足りないところを聞きにいくということ、これはすごく大切なこと。それでもしも自分が輝けたのであれば、その後今度自分が助ける側になればいいんだなということを思いました。まずは弱さをさらける勇気というのは若い頃だけじゃなくて、大人になってからも・・・大人になった方が勇気がいると思うんですけど、そういう勇気を持ってもいいんじゃないかなと思いました」と語ると、会場からも感嘆が。
「これがアニメの世界だと思わずに、現実に自分に起きているものと共感しながら見ていただくときっと皆様の心の中にも何か答えが見てくる感じがすると思います。先ほど弱さをさらけると言いましたけれど、大人の弱さをさらけるのって難しいですよね。さらけすぎると嫌われるんじゃないかと思ってしまうし」といい話になりそうなところ、MCが「さっき控室で宮尾さんが『今日はたくさん笑いを取りたい!』って・・・」とまさかの“さらけ”で宮尾さんも「ちょ・・!言わないでください!!(笑)」とアタフタする場面も。

幼少期から始めるのが定石と言われるバレエにおいて、宮尾さんが始めたのは14歳。この世界では“遅い”と言われる年齢。千鶴もそうした“常識の壁”に阻まれながらも、それでも情熱冷めやることなく、夢を追いかけます。宮尾さんは「バレエは足を外旋しますので、骨格形成が終わる前に始めた方が有利は有利だと思うんです。でも僕もそうでしたけど、そういったハンデのようなものは情熱と努力、あと・・・才能で(笑)飛び越えていける。自分が信じていればきっとそうなれる」と語ると会場からは大きな拍手が起こりました。

自身の<才能>について自覚できるものなのか、問われた宮尾さんは「(自分でも)わかってましたね」とお茶目に語り、場内からも笑いの声。「熊川哲也さんをTVのコマーシャルで見て、明日からこの人のようになりたいと14歳の終わりにバレエを始めて。それまで画家になりたかったんですけど」とまさかの“パリエト”との一致ぶりに場内からも驚きの声が上がりました。「スタジオジブリに入りたいなと思っていたんですけど、そこから突然バレエを始めて今!K-BALLET TOKYOの芸術監督までなることができて。これは自分を信じていないとそうならないです!」と話したところで会場から大きな拍手が湧き起こりました。「全く根拠のない自身がありましたね、当時は(笑)その後バレエ始めて3年で海外留学と、トントントンといっちゃうんですけど、就職で僕はつまずいて。就職先が見つからず一度帰国し、それがやはりまた大きな転機となって、そこからやはり『自分にはバレエしかないんだ』と思うとご縁があって。K-BALLET TOKYOのダンサーとなり、そこでまた自分を信じ!そこで絶対にプリンシパルになる男だと信じ!そしてプリンシパルになり!今や芸術監督!!・・・を任されております(笑)」とユーモラスな語り口調で会場も沸きました。「たくさん周りの方々に迷惑をかけてきました。その分、これからは恩返しする人生にしていきたいと思っております・・・」と、それまで自信満々に語ってきた口調とは一転して自戒が始まり、会場は笑いと拍手に包まれました。

応援してくださるファンからもらう力について聞かれると宮尾さんは「舞台の上に立っていると客席というのは真っ暗で、スポットライトも強くてお客様のお顔というのは見えないんですけど、存在と温度とその時のお客様の集中している空気、また終演後の拍手の大きさなどで、こちらはそのエネルギーを感じますので、唯一自分が踊ってきた意味ですとかを感じられる瞬間なのかもしれないですね」と深く感謝。また、ライバルの存在、憧れ存在については「憧れはずっと熊川哲也さんでした。ライバル・・・僕の場合はあんまり意識してなかったんですよね。自分がとにかくトップに行くことしか見えてなかったので。ただ、いい意味で刺激を与え合える仲間のような人はいますね、今も連絡取り合ったり。僕は、セリフに関わるお仕事というのはさらにもっと後から始めたので、千鶴さんもそうですけど、“和物”の動きと“洋”の動きって全く正反対。重心が下と上で全然違いますし、すり足・内股でバレエとは真逆。セリフもそれと近いものがあって、呼吸がバレエダンサーって常に引き上がっているんですけども、セリフの時には落とさなきゃいけない。そういうことを共有できる仲間、良きライバルがいまして、“体の使い方はこうしたらセリフが言いやすいよ”とか情報交換します」と明かしました。

映画にとって欠かせない“音楽”。宮尾さんは「すごく音楽に表情があるなと思ったんです。呼吸とか表情というのをすごく感じられて、生きている音だなと思ったんです。セリフでもそうなんですけど、言葉というのは説明ができるんですけども、その先の感情や心の機微を表現するものは常に“音”だと思うんですよ。逆に僕たちが踊っている時の音楽の役割というのはその時の情景だったり感情表現を代弁してくれるもの。言葉にならないような感情を表現してくれるのが音楽だなと思います。この劇中音楽も生きた音で素晴らしかったです」と、服部隆之の音楽に絶賛を送りました。

最後に宮尾さんは「本当に大変な時代になってしまっていますけれども、この映画を見て勇気をいただきましたので、どうか皆さんもこの時間を楽しんで」とメッセージを送りました。

劇場アニメ『パリに咲くエトワール』K-BALLET TOKYO コラボ特別試写会
【概要】
■開催⽇時︓3⽉3⽇(⽕)14:30 より
■場所︓新宿ピカデリー
■登壇者︓宮尾俊太郎(バレエダンサー・俳優/K-BALLET TOKYO 芸術監督)

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