Side Story「プラネタリウム」公開!
大学内にあるプラネタリウムを訪れた、空野と冬月。
満天の星が投影される下で、ふたりが考えていたことは――。
学祭の日、アニメでは描かれなかった日に起きた出来事を描いた、特別なサイドストーリーをお届けします🪐
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Side Story「プラネタリウム」作・志馬なにがし
いつものテラス席には上へ伸びる鉄階段があって、それを上ると半球状のドームがあった。
「天儀室」と書かれたそこはプラネタリウムだった。
強風モードの扇風機が首を振っている。ほこりっぽい匂いがするが、涼しくはあり快適だった。
部屋の真ん中には球体と筒を組み合わせた黒い装置があり、その装置を囲むように木製の椅子が並んでいる。
これから半球状の天井に星々が投影されるのだろう。
「入れてもらえてラッキーでしたね」
と、冬月が横でニコニコしている。
「じゃあ、このあたりの椅子に座ろうか」
「かけるくんも横に座ってくださいね」
そんなことを平然と言う冬月は手探りで椅子を探していた。
手を貸すと、冬月の手はひんやりとしていた。
今週末に学祭があるとのことで、学内は準備で慌ただしかった。
冬月といつものテラス席にいると、階段を上る人たちがいた。
鉄階段の音に「階段の上って何があるのでしょう」と冬月が言うので、「プラネタリウムらしいけど、気になる?」
と口にしてしまっていた。
案の上、冬月は見えない目を輝かせて「気になります」とか言うので、階段を上っていた人たちに声をかけると、
「テスト投影するので観ますか?」なんて誘われ、現在に至る。
「なんで大学にプラネタリウムがあるんでしょうね」
「昔、航海科の授業で使っていたらしいよ。船から星を見て、自分の位置を調べる方法があるんだって。鳴海からの情報」
「昔ってことは、今は授業で使わないんですか?」
「使わないって。さらっとは習うらしいけど、今はGSPがあるからって」
「見渡す限りの水平線があって、夜空には満点の星って、なんだかロマンチックですね」
「座礁しないか僕ならびくびくしてそうだけど」
「もうかけるくんったら」
大きな口で笑う冬月を見ていると、ドキリとする自分がいた。
そろそろ投影しますよ~、と声がして、よろしくお願いしま~す! と声をかける。
部屋は暗くなって、装置が星々を映した。
実際、こんな満点の夜空は世界に存在するのだろうか。地元でも、もちろん東京でも、こんな夜空は見たことがない。
まるで霧吹きで黒い紙に白い絵の具を吹きかけたような空だ。
例えば、街の光も届かない海の上ならば、こんな星々が見られるのだろうか。
さっき、冬月が『ロマンチックですね』と口にした言葉が、なるほどと思えてくる。
「冬月って星が好きなの?」
「実は私、プラネタリウムも初めてですし、天体観測もした記憶がないんですよね」
「え~、じゃあなんで気になるって」
それは、と冬月は一拍おいて、
「かけるくんが、『気になる?』って聞いてくれたから、うれしくなっちゃって」
と、暗い部屋のわずかな光の中で笑う冬月。なんだろう、頬が赤くなっている気がする。
「カップルでプラネタリウムって、デートっぽいですね」
冬月がそう言うので、聞こえるか聞こえないかの声でぼそりと答えた。
「相手は、僕でいいのかよ」
実を言うと、先日、一緒に花火を買いに出かけてからというもの、冬月を意識する自分がいる。冬月の方も以前より距離が近い気もしている。
これが勘違いなのか、事実なのかはわからない。
恋愛経験がなさすぎて、こういう距離感が測れないでいる。
航海士が星で自分の位置を測るように、僕も冬月との位置が測れればいいのに。
プラネタリウムに映る星々を見ながら、そんなことを考えていた。
《プラネタリウム 了》

