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オフィシャルインタビュー【第6回】中村悠一さん 梶田大嗣さん 矢野優美華さん 鼎談

大人気ヒーローの裏の顔…!? レッドキーパー登場!

矢野 ド緊張していますが、よろしくお願いします! 中村さんは、レッドキーパーというキャラクターの第一印象ってどんなものでしたか?

中村 レッドキーパーは、自分なりの考えで行動しているのかなとは思うんですけど、まだ何とも言えないキャラクターだなという印象ですね。彼の内情に寄り添ってみても、本当はどう考えているのかがまだ描かれていないしわからない。あくまでこの作品の中で彼がどういう立ち位置でどういう見せ方がされているかからしか読み取れない。そうやって見てみると、シンプルに敵役。圧倒的な強さを持って主人公の戦闘員Dの前に立ちはだかる存在です。ドラゴンキーパーのメンバーも同じ立ち位置ではあるけれど、そのメンバーとくらべてもレッドキーパーはさらに何を考えているかわからない…。そこが彼を演じる上で大事なんだろうなと思いましたね。アフレコに入る前、さとうけいいち監督から特に指示はなかったんですけど、お二人にはあったんですか?

矢野 私と梶田くん、小林裕介さんはさとう監督と一緒に本読みをしたんです。

梶田 僕は「桜間日々輝は純粋さを押していって」と言われたり、それぞれポイントを教えていただきました。

中村 メインキャストは本読みをしたらしいと聞いていましたが、やっぱりそうだったんですね。

梶田 中村さんのオーディションの時に、「言い方を変えてやってみて」というディレクションをされたとさとう監督から伺いました。

中村 レッドキーパーは、オーディションで「こうやるとどうなる?」みたいなディレクションをいただいたので、レッドキーパー役に決まってからはそれをベースラインに作りましたね。調整したのは内面的なところではなく、フォルム。聞こえ方みたいなところを、どれぐらいの幅でやるかというのは話し合いました。レッドキーパーの思考や行動原理ではなく、ヒーロー然とした表向きの顔と裏での残酷な顔を出してほしい、目的の障害になるなら一切気にせず排除するっていうところの落差は明確に出していい、という指示がさとう監督からありました。

矢野 そのレッドキーパーの二面性のような部分は、どう捉えてらっしゃいますか?

中村 やっぱり難しいですね。「実はこう考えている」みたいな部分が見えないようになっているし、だからサイコパスっぽく見えるキャラクターですし。そこが彼のキャラクターとしての面白さなんですけどね。その時々の感情がセリフにはっきり乗っている人ではないので、二面性というよりは、常に何を考えているか本当にわからない。ただ、自分なりの正義の行い方についてルールを持っていて、それに沿わないことにだけ怒るというのははっきりしていますよね。自分の部下を平気で殺していますけど、悪びれる気持ちすらないようだし。そう思うとある意味、二面性はないんじゃないかなと。他のドラゴンキーパーたちは、メディア向けとオフの顔で違いがあるけど、レッドキーパーだけはオンオフの差があまりないし。逆に人間味が感じられなくて怖い点だと思いますね。

矢野 私が演じている錫切夢子もレッドと同じで、何を考えているかわからないんです。バックボーンもわからない2人なので、中村さんがこのレッドキーパーをどうやって演じられるんだろうってすごく興味があって。参考にしたいなと思い、アフレコを後ろからこっそり見ていたんですが、私にはレベルが高すぎました(笑)。私が悩んでいた部分を完璧に演じあげていらしたのですが、その技術は私には真似できないなと思いあきらめて、自分にできることをやるようにしました。

梶田 僕も真横から見てましたけど、わからなかったです。

中村 その役の気持ちや考えていることはわからなくても、台本を読んだり、映像を見ていて「今こういう風に見せたいんだな」ということはわかるので、そこを汲んでやっていく以外ないですよね。やっぱりレッドキーパーと夢子は難しいですよ。

矢野 そう言ってもらってホッとしました(笑)。

中村 原作の先生にしかわからない部分ですからね。まだ描かれていない部分がたくさんあるでしょうから。

梶田 視聴者の方にとっても、レッドキーパーと夢子はつかめないでしょうね。

中村 夢子は目のハイライトが消えているし、レッドキーパーは目がガン決まりですからね。2人とも誰を見ているかすらわからないので、お客さんにとっても不気味に見えるかもしれないですね。レッドキーパーはなにせ人間味が感じられないからとっつきにくい。怪人や他のキャラクターとのやり取りを見ていても、ここでキレたなというポイントがわからない。急に怒ったりするし、イエスかノーかだけみたいな人物だから、リアルに会ったら恐怖しかないでしょうね。

梶田 演じる上で悩んだ部分はありましたか?

中村 そこまでは悩まなかったですね。今のところ描かれているのは、そういった表面的な部分だけなので。監督の中に方針があるでしょうから、そこに乗ればいい。演出面を伺えばいいので、意外と悩むことはなかったです。

 


レッドキーパーの人間的な魅力とは?

矢野 女性キャストで座談会をしたとき、翡翠かのん役の和氣あず未さんがレッドキーパーを激推しされていたんですよ。

中村 変な男が好きなんですね(笑)。

矢野 「自分に不要だと思ったらあっさり手放すところがある人だから、恋愛したとしたら最初は冷たくても、次第に私にハマって、私がいないと無理になったらいい」っておっしゃってました。

中村 確かにレッドキーパーって目的以外のことは何にも興味なさそうだし、やってなさそう。生活感も感じられない。足りないところを支えたいという庇護欲を掻き立てられる人はいるかもしれないですね。

矢野 中村さんから見て、レッドキーパーに魅力を感じる部分ってありますか?

中村 いやぁ、ないですねぇ。

梶田 即答でしたね(笑)。

中村 ブレずに真っ直ぐ突き進むところは彼の特徴だとは思いますけどね。言動だけを見ると、彼は悪いことをしているつもりはまったくない。「これが今の世の均衡なんだし、それを正すことに間違いなんてないでしょう」という、ものすごい選民思想。それぞれの役割を全うしなよっていうのが彼の言い分。彼を好きになれるかどうかは、そこを許容できるかどうかでしょうね。

梶田 そんなドラゴンキーパーにひとり立ち向かっていく戦闘員Dもまた、一本気ですよね。

中村 いきなり戦隊本部に入っていってレッドキーパーを殺そうとする、その考えが無謀というか恐ろしいですよね(笑)。行動力はすごいけど。そもそも戦闘員はどうやって生まれてきているのか…。

梶田 そのあたりはいまだに謎に包まれているみたいです。

中村 戦闘員も本当に千差万別で、この世界の理に従おうよってのもいれば、Dみたいに納得がいかないって思うのもいるし、その間で揺れてるやつもいる。ただわかっているのは、人間ではないということだけ。死なないし、体を傷つけられても戻せちゃう。要は、この作品って登場人物全員よくわからないんですよね。この人はこっち側だとか、この人は裏はないだろうな、なんていう予想はまず当たらなくて、ほとんどのキャラクターが二面性、三面性までも持っている。そこを楽しんでほしいですね。

梶田 演じていても、自分のキャラクターも周りのキャラクターも謎めいているなと思います。

中村 すごく難しい作品だなっていうのは、参加しながら思いますね。メインキャラほど謎が多いから難しいんですよね。今回アニメで描かれるのは原作で言うとまだ序盤の部分。現在見えている範囲をフィーチャーして演じていますが、この先、原作に追いついたり原作が大きく変化していくと、表現の幅が変わるのかなとは思っています。

梶田 同じ戦隊に所属してる側としては、「レッドキーパー怖いな」って思いますけど、大戦隊として戦ってる姿を一般人目線で見るとやっぱりかっこいい。そんなことも中村さんのお芝居からすごく感じます。この作品に関わると、「正義とは? 悪とは?」ということをよく考えるのですが、中村さんはいかがですか?

中村 物語は主人公であるDの視点で動いちゃうから、ドラゴンキーパー側は悪にしか見えない。けれど一般市民の目から見たとき、または戦いの裏で犠牲になっている人たちの目線で見たりすると、正義と悪の価値観は二転三転する。結局それって個人の主観でしかないということが表現されているし、実際そういうものだと思いますね。その人にとって敵になる相手が悪である、という。

矢野 キャラクターごとにその価値観が違うので、正義観が入り乱れている作品になっているんですね。

中村 そういうことだと思います。誰だって、自分が悪役だなんて思っていない。怪人だって役割でやらされているだけ。職務を全うしているに過ぎないわけだから、行いとしては正義とも言えるし。Dはそのいびつな関係を明かしたいっていう思いなんですよね。自分たちはやらされているだけなのに、こんな仕打ちは納得いかないっていう。その真実を世界が知ったらどうなるんだろうとも思っているわけだし。それは別に愉快犯的にやりたいわけじゃないだろうし。正義と悪は、それぞれの視点でしかないと思いますね。

 


目的が見えないキャラを演じる難しさ

中村 自分も難しいキャラクターをやってるから気持ちがわかるんですが、矢野さんも梶田さんも苦労しているだろうなとアフレコをご一緒して思いました。

梶田矢野 (笑)

中村 感情の起伏が明確で、その時々に起こることにちゃんとリアクションを取っていくキャラクターは演じていてもやりやすいですし、周りのキャストに助けてもらいつつ最後まで録れば結構成立するので、あとは出すレベルを調整するぐらいなんです。でも今日のこの3人は、それぞれのペースでしか動かないキャラクター。日々輝が多少、人に合わせる部分があるぐらいですよね。でも日々輝役の梶田さんは、Dが擬態したときの台詞をやることも多い。何も含ませずにセリフを処理しちゃうと、人物像が浅くなって単純なキャラクターになってしまう。原作があって、ここから先どうなっていくかわからない以上、何がどうなってもいいような匂わせを仕込まなきゃいけないキャラクターですよね。それがすでにわかっていたり、わかりやすかったりすればいいけど、まだまだわからない。僕が一緒にアフレコさせていただいたところでは、梶田さんは日々輝に、伏線とまではいかなくともフックになるものを作っているのかなって感じました。僕が感じ取っていただけなんですけど。

梶田 おっしゃる通りで…と言い切れないのが申し訳ないです(笑)。本当にこの3人って複雑なキャラクターだなとは思います。中村さんとアフレコをご一緒させていただいたのは冒頭のほうだったので、日々輝はまだわかりやすいキャラクター性だったので、Dくんを戦隊に勧誘しようというところで、ただ必死に台本に沿って演じていました。

中村 難しいですよね。我々が第1話のアフレコをするとき、最終話のシナリオまで読んでいるわけじゃないので、原作を読んでいても台本を1冊ずつもらうたびに「そうだったんだ」と思うこともいっぱいありますし。

梶田 原作があっても自分の役をつかみづらいとき、台本を読んだときの流れを大事にするとおっしゃっていましたが、それでもわからないときは監督たちに聞いたりされるんですか?

中村 これは難しくて。聞いたところで答えが出ないんだろうなって思うところもあるので。

梶田 じゃあとりあえず匂わせだけしておこう、という?

中村 そうそう。たとえばとある別作品で、「この流れだったらそのお芝居で合ってるんですが、実は彼だけ違うことを考えているので、流れに沿わないでほしい」と言われたことがありました。「原作でそう描かれているんですか」と聞いたら、「いいえ。ただ原作者の先生の頭の中にはあるそうです」って言われて、なるほどそれはわからなかったですとなりましたね(笑)。

梶田 原作にもないって言われちゃうと、万事休すですね。

矢野 聞いてみてよかった反面、結局わからないということもあるんですね。

中村 原作者の先生は想像神。先生以外にはわからないこともあるけど、全部が終わってから振り返ったときに、何かしらの意味が効いてくるかもしれない。「おはよう」と言われて「おはよう」と返すような単純な会話だったらそのままやっていいと思うけど、なぜか急に顔に寄っていたり、監督が特別な演出をしているなと思ったら、そこには何か意味があるんだなと思う。でも真意はわからないから、じゃあちょっと含ませるしかないなとか…。そうやって考えるしかないですよね、僕ら声優は。

矢野 すごく勉強になります…!

梶田 難しいと思う部分は、演じがいがある場所でもあるんですね。今日はありがとうございました!

【ライター:大曲智子】

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