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シリーズ構成/大知慶一郎インタビュー

『五等分の花嫁』から一転、一筋縄ではいかないヒーローアクションへ

――『五等分の花嫁』に続いて春場ねぎ作品を担当されますが、『戦隊大失格』の原作を初めて読まれたときはどんな印象を持ちましたか?

『五等分の花嫁』であれだけ成功された方が次にどういうものを描かれるのか気になっていたんですが、全く違うジャンルで驚きました。大得意なラブコメに挑戦するというのもひとつの手であるにもかかわらず、あえてまったく異なるヒーローもの、アクションものに挑まれた。それってかなり勇気がいることなのに、それでも挑戦したいと思われたんだろうなと思いながら連載を読み始めました。

――シリーズ構成という視点では、どんなところに着目されましたか。

『戦隊大失格』はストーリーが複雑に入り組んでいて、群像劇に近いです。そして悪の怪人が主人公という独特な構図なので、初めて見る人にとっては難しく感じてしまうかもしれないと思いました。ですので、この世界では正義であるはずの戦隊のほうがひどい存在であるということを早々に印象付けるため、序盤はまずレッドキーパーに焦点を置いています。また、さとうけいいち監督はアクション描写が得意な方で、「第1話はまず戦隊ショーとしてのアクションを見せていきたい」とおっしゃっていました。そこで、構成も最初からインパクトを持たせようと考えました。今はSNSで感想がすぐ広まる時代なので、原作通りに初回から「戦隊の戦いは茶番劇である」という世界観を分かりやすく提示して、観る人を引っ張っていこうと意識しています。監督からは、「僕はアクションをしっかり描くので、大知さんにはストーリーのテンポ感を上げてもらいたい」とのことでしたね。

――脚本でテンポ感を上げる方法というのは?

セリフが多いシーンってどうしてもスピード感が落ちてしまうんです。逆に言うと、スピード感がある作品はセリフが少ないです。アニメのいいところは、絵の動きと演技で多くの情報を見せられること。説明のシーンでも、アニメは顔の表情や言い回しなどで補完できるので、「なるべくセリフ数は減らし、動きと展開で見せていきましょう」という方針を、各話脚本に入っていただいた方々にも共有していました。説明ゼリフは少なくてもいいけれど、感情ゼリフは必要なものですし、見ていてもつまらなく感じないものなんです。説明は極力短く、段取りも極力短く、感情が伝わりやすいようにしっかり書くということを意識していましたね。

――序盤の物語の鍵を握るキャラクターとして夢子やレッドキーパーがいます。彼らは感情がわかりにくいキャラクターですが…

春場先生の作品の特徴として、キャラクターが素を見せないことが多いんですよね。『五等分の花嫁』もそうでしたが、今回も先生サイドに「夢子は何が目的なんですか? レッドキーパーはなぜこんなにサディスティックなんですか?」といった質問をしましたが、返ってきた答えが予想をはるかに越えていて、そんな先の事まで考えているのかと驚くことばかりでした。普通、わかりにくいシーンは「曖昧なので削りましょう」となりやすいんですけど、春場先生の作品って、何か引っかかる部分は先々の伏線になっていることが多い。そのため、先にあるストーリー展開を確認する必要がありました。

――主人公である戦闘員Dは、戦隊側の人間である桜間日々輝との出会いを機に、大戦隊に潜入することになります。その後も戦闘員の能力「擬態」を使い、人間たちに溶け込もうとしながらも信用することはない。むしろ人間を見下しているような視点が面白いです。

その点もさとう監督としっかりと会話させて頂いた部分でした。悪の戦闘員であるDが「大戦隊をぶっ潰す」というモチベーションで来ている以上、人間たちとどのような関係値を築くかを考えた時に、あまりベタベタしてはいけないんじゃないかと。原作ではDが時おり人間にほだされかけるような描写もあるのですが、アニメでは「Dは人間たちをただの駒として考えている」ように描いています。原作よりももっとドライに、自分のために人間たちを利用して、時に無情に切り捨ててしまうのがD。この点が、原作から一番変更を加えた部分だと思います。

――Dと日々輝の関係についてはどう捉えていますか。

春場先生も最初に決めていたことだと思いますが、Dと日々輝は対照的な関係です。大戦隊を潰したいのがDで、大戦隊を正そうとするのが日々輝。ダブル主人公のようでもありますよね。うまいなと思ったのが、Dと日々輝ってたまたま出会って利害が一致しただけの関係なので、決して長く一緒にいたわけじゃない。だからDは日々輝のことを全然知らないんですが、日々輝に擬態することになって、訓練生たちのリアクションから日々輝の人間性を知っていくというのは面白いなと思いました。そんな日々輝の立ち位置を利用しながら目的を達成しようとするのがDのクレバーなところ。擬態するしか能のないキャラクターが戦える唯一の方法ですよね。こういうちょっとひねった構成は春場作品ならではの面白さだと思います。

戦闘員Dの視点が独自の面白さを生んでいく

――Dが大戦隊に潜入することで生まれる数々のズレが笑いを呼びます。本作のコメディ要素については?

僕が想像していたよりもずっと、春場先生はこの作品をコメディとして捉えていました。「あまりシリアスになりすぎず、ユーモアはしっかり押さえてほしい」とのことで、純粋なアクションというよりもコメディアクションといった作品なのだと思っています。そもそも主人公であるDがああいう少し抜けたキャラクターなので、作品全体の雰囲気も殺伐となりすぎない。ドラゴンキーパーたちも怖く見えるけれど、それぞれに不完全な一面も描かれるので憎みきれない。スーパースターならではの鈍感さも描くことで、どんなにひどいことをしていてもキャラクターとして好かれる。誰もが有する不完全な一面が本作の面白さになっているんだと思います。

――本作は群像劇に近いとのことでしたが、キャラクター同士の関係性を書く上で気をつけていることはありますか。

キャラクターが増えてくるとキャラクター同士の関係性も混乱しやすいので、それぞれの関係性は正確に把握するようにしています。特にこの先ストーリーが進むにつれて、キャラクターが一気に増えることになりますので、関係性については気を配りました。
この人は今どの立場にいるのか、誰が味方で誰が敵なのか、この2人はどういう関係性なのか。見ている人が忘れそうなタイミングで、もう一度説明したりもしています。登場人物が多い作品ならではですね。

――脚本を書く中で大知さんが魅力を感じるキャラクターはいますか?

作り手は作品を俯瞰して見ていないといけないので、あまり特定のキャラに入れ込むことはないんですが(苦笑)。翡翠かのんは魅力的なキャラクターだなと思います。最初はただ粗暴なキャラなんですけど、原作を読み進めると、実はいろんな面が伏線として描かれている。Dと翡翠の関係性も独特で面白いですしね。あと、XXもいいですね。自分の目標に向かってまっすぐ突き進んでいくDに対し、XXは迷いが見える。最後にどんな道を選び取っていくのかも含め、とても複雑で興味深いキャラクターだなと思います。

――大知さんが感じる『戦隊大失格』の面白さとは何でしょうか。

やはり戦闘員Dが主人公であること。これこそが物語を面白くしている一番のポイントだと思います。Dって戦っても本当に弱いし、頭がいいわけでもない。それでも自分の持っているたったひとつの能力を100%活かして、普通だったら絶対に勝てないような相手に立ち向かっていく。弱いからこそ、様々な作戦を張り巡らせようとする知能戦が描かれる。『五等分の花嫁』もそうでしたが、春場先生はただお話を進めているのではなく、あらゆる面で伏線を張っていると思うんです。最終的にそれらの伏線が綺麗に回収された時、気持ちよさを感じさせてくれる要素がDにあるんじゃないでしょうか。ぜひDに注目しながらアニメを楽しんでいただきたいですね。

【ライター:大曲智子】

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